2011/07/02

WS開催のための準備





2011年6月、
私達は東日本大震災で津波の被害にあった岩手県釜石市を、
現地の仲間であるノリさんの運転する車で回りました。

リアス式海岸という独特な地形を持つこの辺りは、世界三大漁場のひとつとして栄えてきましたが、
今はまるで原爆によって破壊されたかのようで、まさにカオス。

この廃墟が東北の海岸線を延々と覆っているとは、
想像力の限界を超えていて痛みや悲しみの実感が湧く事もなく、
ただ呆然と眺めている事しか出来ません。















街がひとつ無くなっている光景よりも、
車が1台ペシャンコに潰れているこんな姿に、
破壊力のリアリティーを感じます。
私の持っているモノさしでは、それ位が限界なのでしょう。







しかし、そんな凄まじい光景が広がる海岸線から車で20分も走ると、
そこには震災の事など忘れてしまう程穏やかな田園風景が、
あっけらかんと広がっているのです。

今回私達は、パーマカルチャリスト フィルの発案で、
この地で営業する「創作農家レストラン こすもす」
のみなさんと協力して、
被災地に希望の輪が広がる場を作り出そうというプロジェクト
「コスモスガーデン」の準備のためにやってきました。

パーマカルチャーとは、
自然と調和した循環型の暮らしを築くためのひとつのスタイルで、
農業や建築のデザインや技術など、そのノウハウは多岐にわたっています。

でもフィルによれば「あまり固く考えずに、様々な経験や考えを柔軟に取り込んで、
各々のやり方を見つけていく事が大切。」との事です。



ここが「創作農家レストラン こすもす」。
レストランの前には文字通りのコスモス畑が広がりますが、
花の時期にはまだ少し早かったようです。




レストランから10分も歩けば、誰もいない河原をキラキラと清流が流れています。




気温が30℃を超えたこの日、
私達は思わず川に飛び込んだのですが、
水はビックリする程冷たくて、とても長くは入っていられません。
今度真夏に来た時には、川の浅瀬にイスを出して水に足を付けながら、冷たいビールと読書も良いかも。





このプロジェクトのリーダー、フィル。
震災後既に3度釜石市を訪れ、たまたまランチで立ち寄った「こすもす」で意気投合して、
このプロジェクトが立ち上がりました。



「コスモスガーデン」 

これはハーブガーデン、石釜、コンポストトイレ作りなど、
サスティナブルな暮らしを実践するためのワークショップを通じて、
被災した人や地道に支援活動を行っている人達と一緒になって、
東北の地に希望の種を蒔き、育てていこうというプロジェクトです。

フィルは特に、子供達の未来に対して何か出来ないかと模索しています。





レストランのすぐ裏にあるハーブガーデン予定地。
ここは上下2段になっています。

雑草が生い茂り、中景に果樹、遠景には山々が広がる、
とても好い気の立ち込める夢の広がる場所。
「ここの一部はテントサイトにしてもいいね」という声も出ていました。



 


近所の養蜂家の巣箱から飛んできたのか、クローバーには蜜蜂がやって来ます。

午後はこの辺りの木陰にハンモックを吊って、昼寝でもしたくなります。





こちらは下の段のハーブガーデン。




雑草を刈って寝かせ、そこに春に仕込んだハーブの苗を植えていきました。
元々あった石段や池の跡は、そのまま利用出来そうです。



まだ小さな苗達は、こうして割り箸でマークをしておかないと、
雑草達にまぎれていってしまいます。






そしてこちらはレストランの前に広がるコスモス畑のすぐ隣にある、「子供達の畑」の一角。

みんなで一緒になって、沢山の苗を植えていきました。







これからここに集まる仲間達は、
レストランに併設するゲストルームに泊まる事が出来ます。

10人位は寝られる広さがあります。
畳を貼ってタタキを作り、真中には薪ストーブが据えられています。





部屋の外には薪棚を作り、
窓から手を伸ばせばすぐにストーブに火がつけられるようにしました。





石釜のベースも作りました。

まずは木枠を作り、そこにスチールネットを入れ、金属の支柱を立てます。

次にコンクリートを作ります。

コンクリートの粉、石、水を混ぜ合わせていくのですが、
これを練る作業は思いの外重労働で、
しかも一旦作業を始めたら、途中でやめるわけにはいきません。

二人で息を合わせて大汗をかきながらの作業です。




慎重に水平面を出していきました。

コンクリートというのはなるべくゆっくりと乾かした方が強度が増すという事で、
下地に水を撒いたり、途中でも水をかけたりと意外な所で気を使います。




これでベースの完成。
ここに今後のWSで石釜を立ち上げていくわけです。

ピザ、パン、ドライフルーツなど、1度火を入れたら最大で10回位、
その熱の加減にあった調理が出来るそうです。

薪は廃材、食材は畑の野菜やハーブ達と、正に地産地消。

最後、すみっこに子供達がみんなの名前を書き込みました。
私たちの名前は平仮名で、自分たちのはなぜかイニシャルで。




こちらはキッチン。

要らない物を整理して、棚を作って収納もバッチリです。






新たに作った棚。

レストランでは柿を使ったソースを作って販売もしているため、
これまでその作業場だったこのキッチンには、業務用の器材などもあって結構な荷物。




キッチンの隅にはテーブルを置きました。

調理をする人達の脇で、作業を終えたメンバーが冷えたビールを飲み始めると、
味見と言いつつ様々なツマミが出てきます。

夕飯の始まる前には、ここが最も活気あるスペースに。




1週間の滞在の最後の晩は、レストランで宴が催されました。
素晴らしい御馳走が並び、中でも大きな鯛の兜煮や、
柿や桑の葉、スギナなど野草の天婦羅は絶品。




この料理を作ってくれたお二人。素敵な親子です。


地元の仲間、ノリさんの娘のナホちゃん。
苗の植え付けから砂運びまで、何でも手伝ってくれました。
夏はみんなで川遊びに行こうね。



帰り際、一輪だけコスモスが咲いていました。
今度来た時には、畑一面に咲き誇っているのでしょうか。






辞書で cosmos と引いたところ、
花の名前の他に宇宙、そして調和という意味があり、カオスの反意語だそうです。

コスモスガーデン、
東西から人が集い、混沌とした世界に調和を生み出していく、そんな庭。


宮司でもある了さん、
美味しい料理を作ってくれたサエ子さん、
可愛いお菓子の達人エミさん、
みんなこちらが困ってしまうくらいの優しい家族です。




アーちゃんとミミ。

最後の晩、内緒で用意した手作りのプレゼントと一緒に、
「またゼッタイ来てね!」というメッセージが。




これからここで、月に1回ワークショップを行います。
内容は徐々に見えて来ると思いますが、
どれも人が自然に寄り添って生きるサスティナブルな暮らしを
テーマにしていることは変わりません。

未曾有の大震災、そして原発事故という大きな災難に見舞われた日本。
これによって様々な社会的変化を求められる事になりました。
でも実はこの災害が無かったとしても、
やはり我々の社会は行き詰まり、大きな変化を必要としていたのではないでしょうか。


私達はこのコスモスガーデンで、
懐かしくて新しい幸せのカタチを見つけ、
広げていきたいと思います。